つくしが秘書になり1週間。
つくしには困ったことが一つある。
それは・・・・
必要以上に鳴る内線。
相手はもちろん
「はい。秘書課です。」
----「コーヒー」----
「わかりました。」
コンコンコン
「入れ」
「失礼します。」
つくしは副社長室にあるコーヒーメーカーでコーヒーを淹れ始めた。
「どうぞ。」
「サンキュー」
「副社長、年末までご自分でコーヒーを淹れていたと聞きましたが・・・」
「お前がいんのに自分でやるわけねーだろ?」
なんつーいいぐさ。
「私はあんたのメイドじゃないんだけど。」
「俺様専用の秘書だろ?」
つくしは大きなため息を吐いた。
「あんたの秘書の西田さんの補佐だから。私も仕事があるの。」
「じゃあ、ここでやれ。」
「なんでよ。私の席は秘書室にあるから。コーヒー淹れたから、もう帰るから。」
扉の方に向かうつくし。
司は声のトーンを落として話す。
「お前はよ・・・」
振り向くつくし。
「えっ」
「お前はうれしくねーの?」
「どういう事?」
司は立ち上がりつくしに近づく。
「親父たちに認められて結婚が6月に決まって、俺と一緒にいて同じ空気吸って。
まだ婚約発表になるわけじゃねぇけど、それでも俺の婚約者だろ?
俺は1秒でもお前と一緒に居てぇぞ。」
「・・・・嬉しくないわけじゃない。けど・・・」
つくしは小さな声で話す。
「けど?」
つくしの前に立つ司。
「ちゃんと働きたいの。3週間しかあんたの仕事と関わらないんだよ?
試験が終わったらまた楓社長と新しい事業の勉強だから。
あんたの仕事を理解するのはたった3週間なの。
そのね、結婚するんだもん。
だ・・旦那さんの仕事を理解していないお・・・奥さんって嫌なんだよ。」
旦那さんと奥さんというフレーズを自分で使って照れて俯くつくし。
旦那さんと言われ照れる司。
つくしは頬を染め、上目使いで司を見た。
照れながらもつくしを見つめる司。
司の顔が近づいた時
コンコンコン
「西田です」
チッ
その声に我に返るつくし
司を両手で飛ばした。
「いってー」
「もう、会社で何すんのよ。」
「お前だってその気だっただろ?」
ガチャ
西田が入って来た。
「社内ではお控えください。そのようなことは邸だけにしていただきたい。」
二人を見て言う西田。
俯くつくし。
「邪魔すんな。」
と睨む司。
「会食に向かう時間です。牧野様もご準備を。」
「はい。」
秘書室に向かうつくし。
「西田、あの親父と会食か?」
「はい、息子さんも今回はご一緒です。」
「息子?何歳だ。」
「25歳だと思います。」
「・・・牧野も連れていくのか?」
「はい。今回は牧野様のショッピングモールの件でもお世話になった方ですから。」
「・・・わかった。」
東京メープルの近くにある懐石料理の店に入る3人。
個室で待つのは取引先の㈱村上の社長と息子、そして女が一人。
社長の前に司が座り、息子の前につくし、女の前に西田が座る。
「道明寺さん、お待ちしておりました。」
ニコニコと笑う村上。
社長は息子と女を紹介した。
「息子の和也と娘の美紀です。
和也はフランスで勉強していて年明けに帰国しました。25歳です。
美紀は大学卒業後、私の秘書として働くので、今は勉強の為に同行させています。
牧野さんと同じ年です。」
息子、娘と順番に挨拶した。
つくしに微笑む息子。
司に微笑む娘。
司はこれが嫌だったのだ。
子供の自慢話をする村上。
眼中にない司は静かに時間が流れるのを待つ。
つくしは話す人の目を見ないと失礼だと思い、相槌をうちながら話を聞く。
そんな村上はとんでもないことを言い出す。
「楓社長に先日NYでお会いした時牧野さんとうちの息子のお見合いを申し込んだのですが、まだ大学生と言われまして。
まもなく卒業ですよね?どうですか、うちの息子は?」
ニコニコと微笑む村上。
恥ずかしそうな和也。
そう、和也はつくしが楓と出席したフランスのパーティー会場でつくしに一目ぼれしていた。
今日来る予定ではなかったが、先日行われた新年の祝賀会でつくしが司の秘書だと知り今回の会食に同行した。
困った顔のつくし。
不機嫌な司。
普段ポーカーフェイスの西田が少し口角を上げた。
言葉を発したのは司。
「残念ながら、牧野にはお似合いの彼氏がいるようですよ。」
フッっと笑い話す司。
睨むつくし。
「そうですか、それは残念だ。いやいや私が言うのもなんですが、息子は非の打ち所がないほど出来た息子です。
良かったら天秤にかけてください。」
「いや、それは・・・・。」
「私もよく知る人物ですが、天秤にかけても敵う相手の方ではないようです。
それほど牧野の彼氏はいい男と言うことです。」
「道明寺さんがお認めになる方なんですのね。」
美紀が声を明るく言う。
「そうでしたか、残念です。和也諦めなさい。」
和也は残念そうに返事をした。
「道明寺さんは日本に帰っていらしてから、婚約の話などは聞きませんがお相手の方はいらっしゃらないのですか?」
美紀が聞く。
「私は一人の女性以外愛せないので、今も昔も一人の女性だけです。」
「まぁ、そうでしたの。とても素敵なお方なのですね。」
美紀は俯き加減で上目づかいに司を見た。
つくし以外の女を女と思わない司はそんなことされても何とも思わない。
「最高の女です。」
笑いを耐える西田。
ポーカーフェイスが少し歪む。
よくもそんなことを言えるものだ。
ある意味感心していた西田だった。
一方、隣のつくしは普段とは違う汗をかいていた。
恥ずかしすぎる。
バレたらどうするのだろう。
言い終えた後、淡々と食事を済ませる司。
つくしは美味しい料理に手を付けないでいた。
***
村上親子に見送られる3人。
「西田、前に座れ。」
「・・・畏まりました。」
助手席に座る西田。
後部座席は運転席と隔てられる。
リモコンで操作する司。
つくしの警戒ベルが鳴る。
離れて座るつくしに近づく司。
「お前、あの息子と面識あるのか?」
「フランスで一度会ってると思う。」
「何回微笑んだ。」
「は?」
「あいつお前に一目惚れだろ?」
「なわけないじゃん。」
「そーにきまってんだろ。何だよ、見合い話も。
おめー俺がなんか言わなかったら流されてただろ?」
「何言ってんのよ。なわけないでしょ。
あんたこそあんな恥ずかしいこと平気で言って。信じらんない。」
「あ?事実だろ?俺よりいい男が居るのなら連れて来い。」
「あんたは性格が最悪。」
「でも、好きなんだろ?」
司の顔が近づく。
司は意図的につくしの好きな顔で見つめる。
真っ赤になるつくし。
「俺よりいい男も、お前よりいい女もいねぇーよ。お前は俺にとって最高の女だ。」
つくしの耳に唇が触れながら囁く。
つくしの頬に手を添え、司の唇がつくしの唇に触れる。
優しく触れるだけのキス。
もう一度見つめ強い眼差しで言う。
「お前は俺のものだ。誰にも渡さない。」
今度は勢いよく唇を奪う。
味わうように、深く・・深く・・。
司の手がつくしの胸元に触れた時、ドアが開いた。
外から見えない位置に立つ秘書。
あくまでもポーカーフェイスのまま。
「車内も社内もお控えください。」
舌打ちする司。
真っ赤になるつくし。
***
あっという間に三週間が経ち、つくしが司の秘書をする最後の日。
司は内線で秘書室にかける。
いつもつくしが出るのに今日は山野が出た。
「牧野は?」
----「牧野さんは、今休憩時間でランチを終え戻りましたが、またどこかに行きました。」---
「行き先わかるか?」
----「すみません。わかりません。」----
「西田にかわれ。」
----「はい。お待ちください。」---
----「西田です。」----
「つくし知らねーか?」
----「牧野様は屋上かと思います。」----
「屋上?ヘリポートあるから立ち入り禁止だろ?」
----「はい。ただ、牧野様はある事情で鍵をお持ちです。」----
「ある事情?」
----「はい、覆面視察にヘリで移動もありましたので。」----
「わかった。」
ジャケットをもち、屋上へと司は向かった。
***
あいつ屋上で何やってんだ?
ヘリポートへと続く扉を開ける。
外で空を見上げるつくしがいた。
いつか見た光景。
・・・類の見送りの時、デートに誘ったときだ。
つくしはあの時と同じように綺麗な表情で空を見て居た。
「何やってんだ?」
俺の声で振り向くつくし。
ビックリした顔から、俺だとわかると優しく笑った。
「空見てた。」
「なんで。」
「なんとなく。」
「ふーん。」
一緒になって空を見る。
「冬だから空気が澄んで綺麗な景色だね。」
富士山が見え、スカイツリーと東京タワーが見える。
こうやって景色を見たのはいつだろう。
随分と見て居ない気がする。
「ここで働くようになって、今日みたいにランチを早く食べ終えた日は、ここで空と景色を見て居たの。」
何も答えずつくしを見る。
目で会話をする。
「あんたがNYで頑張っているんだと思ったら私も慣れないことでも頑張れた。
残り一年なのに長くて、手を伸ばしたら空に届きそうだなとか、鳥になって自由に飛びたいなとか思ったんだけど、なれるわけないじゃない?
ここは英徳の非常階段みたいだった。
あんたに対等で居たいって言ったのに、ずっと先を行くあんたが憎たらしい時もあった。
でも、時々私が追いついたか確認してよ。って言ったの覚えてる?」
「あぁ。」
「あんたはメールで愛してるって毎日くれたけど、それ以外はメールしなかったでしょ?」
「あぁ。お前は100回に1回しか、嬉しいメールを寄越さなかった。」
「そうだね。・・・・それでも確認してくれてるんだと思ってたから頑張れた。
秘書になってたった3週間だけどあんたの凄さがわかった。
短い時間だったのに、理解しているつもりで居た部分も理解していたのは少しで改めてすごいって思えた。」
「気づくのおせーよ。」
つくしの頭を小突く。
「ホントだね。」
頭を摩るつくしが俺を見る。
姿勢を正して
「3週間お世話になりました。今度秘書をやらせてもらうときは、今以上にサポートできるように自分を磨いてまいります。
ありがとうございました。」
綺麗に頭を下げた。
つくしの頭をポンポンと叩く。
「お前がいるだけで仕事が楽しかった。
俺だけ出張でお前がいない時は辛かったけどよ。
お前の淹れるコーヒーも美味しかった。また秘書になれよ。」
ジャケットを脱いでつくしの肩にかける。
「ありがと。」
「明日から試験だろ?勉強しねーで余裕だな。」
「うん。卒業試験も進級試験も普段の試験より楽なの。
どんなにアホでもお金を払えば進級してくれる英徳だよ?
それでも名門と呼ばれる英徳は普段は難しい試験で大変だったけど。
卒業してもらわないと困る人もいるから、進級と卒業は楽な試験なんだよ。」
「ふーん。トップの成績なら類と同じ名誉もらえるのか?」
「あっうん。社長には必ずトップをとりなさいって言われた。」
「だろうな。」
「大丈夫だと思う。今までやってきたことだから。」
「結果すぐに出るのか?」
「郵送で実家に届く。今回は成績聞かないと。」
「今まで聞いてねーの?」
「あっうん。高校の時は成績の心配よりお金の心配だったし。
大学はその分あんたが払ってくれたからなんの心配もなく受けれる講義受けたし。
失業していたパパの支えでバイトしてた感じかな。
美麗さんのところも、ここも自分磨きになった。無駄な事なんてなかったよ。」
笑いながら話すつくし
「お前は何でも自分で手に入れるな。」
首を傾げて俺を見る。
「そう?お金はないよ?」
「金じゃねーよ。」
「?」
視線を逸らし景色を見る。
お前はお金じゃ買えないものなんでも持ってんだよ。
恋愛に不器用で、ぐだぐだ頭で考えるのが欠点なくらいだ。
「もうすぐ誕生日だね。なんか欲しいのある?」
穏やかな口調で話すつくし。
お前が俺の隣に居れば何もいらない。
「なんもねーな。お前の覚悟ももらったし、結婚も決まったし。
お前と一緒に過ごせればそれが誕生日プレゼントだ。」
「欲ないね。」
「当日は休み貰ったぞ。」
「2月1日に誕生パーティーでしょ?」
「あぁ・・・面倒だけどよ。そこで婚約発表かと思えばまだしねーし。」
「しないでくれて私は助かる。」
「俺は早く、お前が俺の物だって世界中に公表したい。」
「物じゃないから。」
口をとがらせるつくし。
その口をつまむ。
「うっせーよ。」
「いちゃいひょ」
何言ってるか、わからねーよ。
俺が笑えばお前も笑う。
お前はすげーよ。
俺がこんなことで笑う奴だなんてお前に会うまで知らなかったぞ。
類もだけどな。
お互い景色を見ながら心地よい風が吹く。
「つくし。」
「なに?」
「幸せになろうぜ。」
「うん。」
そう言いながら笑うつくし。
?マークが俺に浮かぶ
「何笑ってんだよ。」
「類を見送る時さ、デートしようぜっていったんでしょ?」
「あぁ」
「私あれ聞こえてなかったからさ。」
「思い出すとムカつく。」
「ムカつくな。ってもう時間。」
ジャケットを脱ぎ、俺に差し出すつくし。
「ありがと。司が寒かったよね。行こう。」
「ちょっと待て。」
歩き出すつくしの腕を持つ。
振り向くつくしに軽く触れるだけのキスをする。
唇を離し見つめれば
「「充電完了」」
笑いながら、二人で屋上をあとにする。
屋上で気分転換もつくしと一緒ならコーヒー一杯よりも効果がある。
秘書 牧野つくしもいいけど早く、妻 道明寺つくしになれよ。
そう言ってお前を紹介したいからよ。
つくしは見事トップの成績で試験を突破。
大学4年間トップの成績だったつくしは、すぐに司が払った4年分の授業料が返金になった。
それは、司がつくしに用意した通帳に返金された。
振り込まれたお金に1円も手を付けなかったつくし。
つくしは通帳と印鑑を司に差し出した。
しかし、司は受け取らなかった。
押し問答を繰り返す二人。
最後につくしの一言で終結した。
「じゃあ、これは結婚して子供が産まれたら使おう。」
自分で言って真っ赤になるつくし。
聞いて真っ赤になる司。
数年後、記帳したつくしは言葉をなくした。
果たして通帳の金額は・・・・
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コメント拍手ありがとうございます(^O^)💓
昨日返信しました。おはようございます。
秘書 牧野つくしはとりあえずこれでおしまいです。
秘書期間の司とつくしのイチャイチャは後日番外編として 追加公開します。
3話位あります。
オフィスラブ満載のイチャイチャ♡カテゴリー増やしました。
公開まで妄想をお楽しみください。
本日私は筋肉痛です。
実家に帰って羽を伸ばしたのではなく、仕事をしてきました。
私の実家はリアルに庭師なんですよ。聞いたことのあるフレーズですね。
私の好きなサイトのストーリーがそれでニタニタして楽しませてもらっています。
今忙しい時期で雨で納期が遅れそうだったので、借り出されました。
日本庭園のお宅でコケをはるんですが、兄妹で私が一番はるのがうまいらしく・・・
ひたすらコケを並べ隙間を埋める。
コケの小さなゴミをとったりして大変でした。
しかし、働いた分しっかりお金をもらいました。
マッサージのお店にいこうか本気で考えています。
しかし、今日は仕事でして・・・。
リポビタンファインを飲んで行ってまいります。
子供たちになぜか父から庭の剪定ばさみをもらいました。
我が家は賃貸マンション。
使わないよ・・・爺さん。笑
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