煮込んでいる間に、牧野とサラダの準備をした
俺の役割はレタスをちぎること。
「小さいころからパパの給料日前はね、カレーかシチューか肉じゃがなの。
それでもっと大変な時はね、肉じゃがからスタートで、半分はコロッケになって、半分はカレー。
カレーからカレーうどんとカレーチャーハンになって給料日にお寿司がうちの贅沢だったの。」
笑って話す牧野に、頷く母親。
「パパの給料が少ないから、ママも苦労したわ。」
「ママっパパ今頑張ってるから許してっ」
おどける父親に俺まで自然と笑っていた
弟が帰って来て夕食になった
狭いテーブル
胡座をかいてみんなで食べた
スーパーって所で売っているカレー粉でつくったカレーなのに今まで食べたカレーの中で一番おいしく感じた。
「どう?」
「うまいっ」
「やったねっ」
すげぇ嬉しそうな牧野。
ニヤつく牧野の母親
「美味しくて当然ですよ道明寺さん、隠し味はつくしの愛情ですからっ」
「なっママっ」
「どうりでいつもより美味しいと思った。」
弟の言葉に牧野のゲンコツが飛ぶ
「いってー暴力姉ちゃん、こんなんじゃ道明寺さんに嫌われるぞっ」
「もううるさーい」
叫ぶ牧野にみんなが笑った
俺にビールを注ぐ牧野の母親が、ニヤっと笑い俺をみた
「つくしったら遠距離の間鳴らない携帯握りしめて、星空眺めてたんですよ。」
「ママっ」
「そうそう、夜遅くにTVの前で正座してたり。」
「進っ」
「パパが近所の子供にうさぎのぬいぐるみあげようとしたら本気で怒ってあたしの大事な宝物だからダメって。」
「パパっ」
真っ赤な顔をしている牧野
俺はそれを聞けてすごく幸せで、気づけば牧野の4年間の俺への愛がたくさん聞けた
6畳の居間で食べる夕食
普通のカレーとサラダ
普通のビール
普通なのに今までで食べた中で一番おいしい夕飯だと思った
俺も牧野とこんな家族になりたいと思った瞬間だった
暴露大会のように聞かされる牧野の行動
俺にマフラーを編んでいたら、寝不足で成績が落ちそうだったから途中でやめた話や毎年バレンタインを送るかどうか悩んでた話。
メールを送るのに1時間かかってた話とか牧野はずっと「やめてぇー」って叫んだいた。
類がどんなに牧野の家を訪ねてきても牧野の心にはいつも俺がいたって話
いろんな話を聞けて、4年間知らなかった牧野が2年くらいの年月に縮んだ気がした
気付けば、夜の9時
牧野と帰る支度をして玄関を出る
「いつでもいらしてください。」
牧野の母親は俺に言った
「はい。これからも宜しくお願いします。」
そう言えば、牧野や牧野の家族が驚いた顔をした後笑った。
「「「こちらこそ。」」」
牧野が牧野である理由がつまった場所
俺も早くその一員になりたいと思った
***
迎えの車に乗り、牧野と邸に向かった
タマがニヤニヤしながら俺を迎えた
「長旅お疲れ様でした。」
「あぁ、棺桶に入ってなくてよかったな。タマ」
バシッ
「いってーな。」
「坊ちゃんは全く持って、口が悪いっ」
「うるせぇよ。準備してたか?」
「はい、仰せの通りに。」
「サンキュ」
タマと牧野が二人で話していた
俺の知らない間に、タマと牧野の絆が強くなっているような気がした
タマは牧野が好きだったからな
牧野の手を握り、南側の中庭に向かう
「どこに行くの?」
「約束しただろ?日本で桜見るって。」
「えっあ・・・覚えてたの?」
「忘れるわけねぇだろっ」
「・・・うん。」
ライトアップされた1本の桜の木
満開の桜の下に用意されたお花見セット
タマにいって一般人がするお花見セットを準備してもらっていた
缶ビールとつまみ
それをみて驚く牧野
「これがお前の言う花見ってやつだろ?」
「うん。」
「とりあえず、乾杯すっか。」
「うん。」
缶ビールをあけ、二人で缶を合わせる。
「「乾杯っ」」
花びらが、ひらひらと地面に落ちるのを見ながら、牧野を自分の方に寄せる
「寒くねぇか?」
「うん。」
準備されたあったブランケットを牧野に羽織、もう一枚は二人の膝にかけた。
「・・・お前さ、4年長かったか?」
「・・・・うん。」
「牧野んちの家族が言ってた話って全部ホントか?」
「・・・・・ホントだよ。」
牧野の顔が赤くなっていった。
「そっか・・・・俺さ、お前は全然会いたいとか言わねぇから、俺だけ淋しいと思ってた。
メールもだけどお前は変に頭使うからよ。
これからはそばに居るんだから言いたいこと言えよ?」
「・・・努力はする。」
「そこに努力使うなよ。」
「仕方ないじゃん、これが私なんだもんっ」
開き直る牧野に、何だか笑えた。
「まぁ、お前の素直じゃねぇのも好きだけど、素直なお前はもっと好きだからよ。
お前の我儘も聞けるくらいの男になって戻ってきたと思うから我儘言えよな?」
「わかった。じゃあさ、あんたはこの邸に住んでくれない?」
「はぁ?」
我儘ってそれかよ。
「だって、あのマンションは私の寮みたいなものだからさ。
それに同棲ってまだ早いでしょ?一応、私も時間も欲しいしさ。ねっ。」
こんな時だけ可愛く、首をかしげる牧野が憎たらしい。
「却下。」
「なんで?さっき我儘言っていいって言ったじゃん。」
「俺が言っていいと思った我儘はそんなんじゃねぇ。」
「じゃあ、どんなのよ?って言うか、同棲して社員にバレたらどうするの?
しかもさ、私はあんたのお母さんの下で働いてるのにさ、どんな顔していればいいのよっ」
それからずっと文句ばかり言って俺とは一緒に住むのは嫌だと言う牧野
牧野のうちにいっている間に俺の荷物が運び込まれていることを教えると、すげぇ顔で怒ってた。
本当にこいつは帰国した日、すげぇ可愛かったのに、時間が立てばいつもの牧野に戻っちまう。
カマトト女の鈍感女で、意地っ張り
そんな女が好きな俺も相当イカレてるが、そんな女が良いから、牧野じゃないと意味がないから俺も頑張れた
振り返ればあっという間に感じる4年だけど、やっぱり大人に変わる牧野をそばで感じることの出来なかった自分に悔しさが滲む
空白に近い4年を取り戻せるように、俺は牧野との時間を大事にしたい
愛してるのメールの文字は、耳元で囁く言葉に変えよう
ずっと使っていたTV電話は、会社の自室に持っていこう
三条が作ったアルバムは牧野に見つからねぇところに置こう
ぶるっと震える牧野
「中に入るか?」
「もうちょっとだけ見ててもいい?」
「・・・少しだけだぞ?」
「うん。」
桜を見ながら、牧野もこの4年を振り返っている様だった。
手を伸ばせば触れ合える距離
牧野の頭が俺に寄り掛かる
今までの俺たちのゴールが帰国なら、今度のゴールは結婚式か?
それまでに俺に出された課題はいろいろあるけど、牧野がそばに居てくれるならどんな課題もこなせそうだ
「あのさ、私の元に帰って来てくれたありがとう。
信じて待ってて良かったよ。」
俯きながら話す牧野を強く抱きしめた。
「おめぇはそんな可愛いことここでいうな。
場所も考えねぇで襲うぞっ」
「なっやめてっ」
暴れ出しそうな牧野をさらに強く抱きしめ強引に唇を奪った
「んっ」
帰国してから、常に重なる唇
乾燥した春
当分の間、唇はひりひりしそうだ
だけど、その感覚が牧野がそばに居ることを実感させてくれる
唇を離すと牧野の頭に花びらが1枚
ハート型の桜の花びら
ベンから桜の花言葉は 純潔だと聞いた
純潔 けがれがなく心が清らかなこと
たくさんの花言葉がある桜だが牧野にぴったりだと思った
まぁ、牧野の本当の純潔は俺が奪っちまったが・・・・
来年も、再来年もこれからはずっと牧野と共に桜を見よう
山桜が、ライトアップされたソメイヨシノの隣に植えられたいた
「道明寺、桜すっごい綺麗だねっ」
そう言って俺に微笑む牧野
山桜の花言葉は あなたに微笑む
牧野の笑顔をこれからは俺がそばで見ていたい
桜を見ながら次のゴールを考えた
それは、牧野と家族になること
胸ポケットに入った紙に俺たちがサインするのは桜が散り、桜の木全体が新緑の葉で瑞々しく艶を帯びた頃
牧野つくしが道明寺つくしになる。
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