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F4それぞれの卒業式  花沢 類 中編

大学の敷地から高等部の敷地に向かうつくし

この後会社に向かうため、スーツで大学に来ていた。

二足の草鞋を履くつくし

あの怒涛の1年から間もなく4年

人生は何があるか本当にわからないものだ。

走馬灯のように司、類、あきら、総二郎との思い出がよみがえった。




類、あきら、総二郎の高校の卒業式は隣の敷地に建つ大学部に行くので淋しいと言う気持ちはなかった。

それよりも司の渡米で頭がいっぱいだった。

今回は大学部の卒業の為、卒業したら大学には一切来なくなるのだ。

最近では後継者としての仕事が忙しく、3人は大学にも顔をだしていなかった。

寝太郎と言われた類まで。

仕事を通じて会うことはあったが、大学で会うのとは互いに少し違う雰囲気だった。

それはつくしにとっては淋しいことでもあった。



歩くこと数分

高等部の非常階段にやって来たつくしだったが、力が抜けた。

「あちゃー。ペンキ塗りたてって。」

非常階段の前にはペンキ塗り縦立ち入り禁止の立て看板が置いてあった。


「また今度来るね。」

つくしは非常階段を後にした。



***






英徳学園大学部卒業式当日

大学の門の前には高級車や一般の車などが混ざり合う奇妙な風景

今年の卒業生は英徳学園に長年通う者が6割、4割が一般からの生徒

名門の英徳学年は一般から入る生徒は六大学に入れるほどの優秀な頭脳の持ち主

将来皆が日本の経済界を背負ってたつ生徒だ

また、英徳学園に子供を通わせる親にとっても、優秀な人材がいることがわかる。

後継者と同じ大学の出身と言うだけで就職に有利になるので六大学を出るより英徳や同じく名門の永林学園に進学する者が多い

その為かなりの倍率であり、大学側も一般入試で進学してきた生徒に対してA~D段階で評価しており、トップの成績で合格した者は全額授業料免除

2と3位を半額免除。5~10位までを3割免除など、30名が一部の学費を免除される

大学側も寄付金での運営が大半の為、一般の優秀な生徒を確保し学校の評価を上げるためには必要な宣伝であり生徒も多額授業料を免除されることと。

あの有名なF4がいる大学でさらに同じ学年と言うだけで一般からの倍率も上がったほど。

つくしは類の家の車で一緒に会場に入った

親に混ざって一人だけ生徒のつくし

居心地悪いように思えるが、つくしには強い味方が3人もいた

寄付金額が多いF3の親は席が他の人とは別な場所にあった。


類の母 花沢 百合

あきらの母美作 夢華

総二郎の母 西門 玲子


あきらと総二郎の父親は来ていなかった。

つくしは何度かみんなで類の家に遊びに行くうちに類の母親と仲良くなっていた。

類の母親は類の変化に気づき、つくしに会いたかったのだ。

初めての出会いは、類たちの高校の卒業式

今まであまり友達を招かない類が、友人を引き連れて来た時は邸のものが皆びっくりしたのだ。

今まで類の家を訪れた人は 司、あきら、総二郎、静

そしてつくしが類とデートした日に来たくらいだ

だが、その日は家族のモノが不在で、類の母親は使用人からその情報を聞いたのだ


類の変化はその女性のお蔭

類の母親はつくしたちが類の家に来た日、類の部屋に行きつくしにお礼を言った


「牧野さん、類の笑顔と心を取り戻してくれてありがとう。」

社長夫人が一般の高校生に深々と頭を下げた


それをみてつくしも深々と頭を下げる

互いに頭を下げ続けるのを見て、類や他のみんなが笑った

「母さん、牧野。それ以上下げると頭が床につくよ?その辺にしたら?」

類は母親のしたことに照れながらも、二人の肩をそっと触った。

「クスッごめんなさいね。」

類の母親の笑った顔は類によく似ていた

ビー玉の瞳もふんわりとした髪質も

日本人とフランス人のハーフ。

類はクォーターだった

頑固一徹のお父さんからは想像できない類の容姿

花沢類はお母さんに似ているんだと、つくしは思ったのだ。

その後、つくしを気に入った類の母親は、あの日来ていたつくしや滋、桜子を呼び何度かお菓子作りをした。

のちに、ポロリと美作邸で滋があきらの母親に話してしまい、私だけ仲間外れなんてぇーーーーと言って泣きながらあきらに抱き付いた母親

あきらのお願いにあきらの母親ものちに仲間に入れた

あきらの母親はあの性格であり、毎回あきらの母夢華がつくるお菓子を美味しいと幸せそうに食べるつくしを大好きになっていた

そして西門一門で茶道を習っていたつくしは、総二郎の母親とも良好な関係を築いた。

総二郎の親もバカではない

バレてないと思うのは本人だけで夜な夜な邸を抜け出し、朝帰りする息子を知っていた。

だが、父親が父親だけに黙認していた玲子だったが、総二郎がつくしに茶道を教えるようになり後継者としての自覚や節度ある生活をしつつある総二郎。

それは紛れもなくつくしのお蔭だと思っていた。

玲子は西門一門の長女であり、下には2人の妹がいた

跡取りに恵まれなかった西門家は、弟子であった総二郎の父、西門 純一郎を婿養子として迎え家元とした

現在では冷めきった夫婦の関係でも離婚にならないのは複雑な後継者としての地位や世間体があるから。

そんな中で男三人の母であり、娘の居なかった玲子

最初は、道明寺家の跡取り息子の恋人だからという位置で見ていたがつくしの魅力を理解し娘のように可愛がった。

のちに、総二郎の一番弟子としてつくしの名前をだし、高崎美麗の実家である着物屋からつくしに着物を贈ったのも、玲子の気持ちの一つだった。

気が付けばつくしの周りにはすごい人ばかりがいて、そしてつくしを応援していた。


清く、正しく、何事にも一生懸命なつくしの姿は、歪んだ世界で生きる者たちにとって眩しいくらいの輝きとエネルギーを放つ美しい人間であった


式が始まり、学園長の挨拶で始まった

畏まる学園長

卒業生の卒業証書の授与

数名の代表が受け取る。

そして名誉ある賞の授与。

「あの、自分の子供の卒業式ってどんな気持ちですか?」

式中に不謹慎であるが、隣りで夢華と玲子が話すのを見てつくしは類の母、百合に聞いた。

「普通の親はこんな時は泣くのよね。後継者として生まれた時から人生が決まってしまったあの子にとって、この学園に入るのは義務だった。なんの楽しみもなくここに通う毎日。
あの子達は清々してるんじゃないかしら?
私は長い習い事を終えたんだな。って感じかしら。
あとは申し訳なさ?かしらね。類の笑顔を奪ったのは、私たち親よ。
類を産んだ後、体調を崩した私は子供を産めなくなったの。床に臥せる毎日で夫は積極的に類の子育てに参加した。
干渉しすぎるほどね。それがあの子には負担だったの。
心を閉ざしてしまった類の心の扉をこじ開けてくれたのは牧野さんあなたね。何度も言ったけど本当に感謝しているわ。」

「わっ私は何も。」

つくしは首を振った。

「クスッ息子を救ってくれたと思っているのは私だけじゃないわ。ねっ美作さん、西門さん。」

類の親は二人の母親をみた。

「「?何の話?」」

「救世主の話。」

クスクス笑う二人。

「「そうね。」」

自覚がないのは本人だけ。

「学業は大学や大学院が最後の卒業式になるけど、一人の人間としての卒業式っていつかわかる?」

総二郎の母はつくしに問う。

「人生の門出の結婚式ですか?」

つくしは答えた。

「両親の葬式の日よ。」

「葬式?・・・それは親から卒業ってことですか?」

「そうよ。親がいるうちはまだ学ぶべきことがあるってことでもあるのよ。
卒と言う字は なべぶたと 人が二つ 十 の文字から成り立つでしょ?
十はあの世や天国の意味。天国(十)に旅立つ人が二人。なべぶたは棺桶の蓋。
この世に生をうけた瞬間、人には両親が存在する。
のちに何かの原因で片方になることは合っても、初めは二人の親から人生は始まるのよ。
子供は親の葬式で棺桶に蓋をする日、初めて親から卒業するの。
どんなに憎い親でも、一つくらい人生で学ぶことってあるのよ。
尊敬される人、反面教師として見られる人、それぞれ子が親を思うことは違うだろうけど、親が子供を選べないように子供も親を選ぶことは出来ないって良く言うわね。
だけどね、子供は親を選んで産まれて来たのよ。親も子供を選んだ。
精選って言葉があるようにね。
生命の神秘で選ばれた子供たちなのよ。
子供は、未熟な親を助けるために産まれてくるって知ってる?」

「いえ。知りません。」

「親も子供が産まれて初めて学ぶことがたくさんあるの。
私は総二郎の上に子供がいるから親になって27年よ。だけど、どこかで道を間違ったのね。
子供の事なんてわからないことばかり。
秩父神社にはね、親の心得って書かれた紙があって、
赤子には肌を離すな
幼児には手を離すな
子供には眼を離すな
若者には心を離すな
って言葉があるのよ。
私たちはお金もちであるゆえに、子供を使用人に任せていた部分があってね、気付けば
肌、手、眼、心、全てを離していたみたい。」

「そうですね。」

類の母が頷いた。

「一度離れたものは修復するのは難しいことだけどね。
あの子達が本当の意味で卒業するまで私はあとなにが出来るかしらね。
総二郎は祥一郎のスペアだと思っているようだし。
子供にスペアなんて存在しないのにね。」


総二郎の母は淋しそうな顔をした。

少なからず事情を知っているつくしは複雑な気持ちで聞いた。


来賓の挨拶では類の父 花沢 雄一が挨拶をした

堅物の人間らしい、挨拶だが最後に雄一は生徒たちの居る方向を見て言った。

「この就職氷河期の時代に就職率100%を実現する大学と皆さんの実力にただ驚くばかりです。
だが、就職してからも気を緩めず自分の一人のチカラだけでは微力だとなんでも諦めずに、信念を貫き通す強い意志をもって人生を歩んでください。
そうすれば人生は明るい未来へと切り開くと言うことを忘れないでください。
相田みつを先生の言葉に『一生勉強、一生青春』という言葉があります。
「年をとって困ることは、身体が固くなるばかりでなくて、
 頭が固くなること、心が固くなることです。
 心が固くなると、感動、感激がなくなります。
 一生青春を保つためには、心のやわらかさを保つこと。
 そのためには、具体的に何かに打ち込んでいくことだと思います。」
生前、そう語っていた相田みつを先生は、まさに一生勉強一生青春の言葉通りに生きた人間でした。
本日で学業は終わりですが、これからも何事にも向上心をもって人生を楽しんでください。
人間と猿の違いは向上心が有るか無いかです。
猿にはボスが必要だが、人間にはリーダーが必要です。
皆さんの中から日本経済の未来を支えるリーダーが現れることを願っております。
本日は誠におめでとうございます。」

雄一は一礼をして壇上を去った。

類が、静かに壇上にのぼる

紙を開くこともせず、マイクの前に立った

真っ直ぐに、つくしを見つめて。


つくしは公の場を嫌う類が壇上に立つのを心配そうに見つめた。

母親のような気分だった。


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  • 2015-03-03 11:45
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  • 2015-03-03 15:53
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  • 2015-03-03 15:58
  • #
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Re: タイトルなし

エスパーです。(笑)
イヤー心に響いて嬉しいですね。

青春万歳!!


油断なりませんよ。
これからも(笑)
  • 2015-03-04 09:54
  • URL
  • うさぎ  keyaki さま #-
  • Edit

Re: タイトルなし

私も子育て中です、この心得を呼んでそうだなぁと思いました。

お互い奮闘しながら、子育てを楽しみましょうね。
(^^♪
  • 2015-03-04 09:55
  • URL
  • うさぎ こうさま #-
  • Edit

Re: タイトルなし

いつも絶賛していただきありがとうございます。
本当にこの心得は勉強になります。
子育ては難しいですが、お互い奮闘しながら楽しみましょう。
(^^♪
  • 2015-03-04 10:00
  • URL
  • うさぎ しょーさま #-
  • Edit

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  • 2015-03-04 10:23
  • #
  • Edit

Re: タイトルなし

心に響いてくれて嬉しいです。

総二郎の失態にゾクゾク♡
嬉しいです。 これからも宜しくお願いします♪
  • 2015-03-05 13:00
  • URL
  • うさぎ ミカエルさま #-
  • Edit

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