怒ったつくしがスースーと寝息を立てるのを確認し、司はつくしの首元に腕を入れ、抱き寄せて眠った。
そっとお腹に手をあてて。
「運がいいっと思って何が悪いんだよっ」
独り言は誰にも聞かれることはなかった。
一番性欲が強い時代に、遠距離を余儀なくされた男は、快楽の虜になっていた。
もちろん、最愛の女限定で。
翌朝、いつも早く起きるつくしがまだ寝ていた。
目覚まし時計を止め、司はつくしの顔を覗いた。
まだ十分に時間がある。
司は抱きしめて、そっと腕を抜き、リビングに向かった。
受話器をとると、下の入居者専用のレストランへ電話する。
「今日の朝飯は、お腹に優しいものにしてくれ。」
「あぁ、それでもかまわない。」
司が帰国して、下で食べていた朝ごはんと夕ご飯は部屋で食べるようになった。
つくしは作ってもらうのも悪いのに運んでもらうのはもっと申し訳ないと言ったが、レストラン側としてはウェイターは皆男性。
司の威圧より運ぶ方が何倍も楽だった。
司は慣れた手つきで、コーヒーメーカーのボタンを押した。
豆を挽き、ドリップされるコーヒー
司の居候でつくしのマンションにはさまざまな物が増えた。
さすがにもう起こさないといけないと考えた司は、寝室に行きつくしを起こす。
「牧野、起きろ。時間だぞ。」
「んっ・・・おはよ。」
「おはよ。」
キスしようとしたら、つくしは布団をかぶった。
舌打ちしそうになった司だったが、つくしの言葉で辞めた。
「ごめん、食欲ない。ご飯食べてて。もう10分だけ寝たい。」
「大丈夫か?」
「うん。」
「一応、おかゆにしてもらったぞ?」
「えっ」
つくしは布団を剥ぎ、司をみた。
「お腹、痛いんだろ?」
「それは初日だけだから大丈夫。眠いだけ。あと食欲がないかな。」
「食う事が生きがいのお前が食欲ねぇのかよ。」
「うん。」
ピンポーン
玄関先まで来た、レストランの従業員。
「ちょっと、出てくる。寝てろ。」
「うん、ごめん。」
司は玄関先で朝ごはんを受けとるとおかゆを寝室に運んだ。
「食べれたら、食べろ。」
「ありがと。」
「おう。」
つくしは司の優しさが嬉しくなり、起き上がりおかゆを食べた。
そんなやり取りがされた朝。
つくしが心配で驚くべき能力を発揮した司がいつもより早い帰宅をした。
既に元気になっていたつくしを見て安堵した司。
別々に風呂に入り、寝室で二人仲良く寝た。
次の日
司の出張が決まった。
無情にも明後日から、出張だと言う。
帰国してから司の初めての出張。
西田に散々文句を言う司だったが、西田は一切相手にせず淡々と仕事をこなした。
急な出張の為、決裁が必要な書類を優先させるため、遅くまで仕事。
項垂れながら帰宅した司。
風呂をすませ、つくしの居るベッドに入った。
司の気配を感じて目を覚ましたつくし。
「おかえり。」
「ただいま。」
チュッっとkissをする。
つくしを抱きしめた司がつくしの頭の上で囁いた。
「明後日から出張になった。」
「そっか、大変だね。」
「お前は淋しくねぇの?」
「仕事だから仕方ないじゃん。」
「行きたくねぇな。」
「行きなさい。」
「なぁ?」
「なに?」
「せいり?って奴、いつ終わんの?」
「はっ?」
「出張前に充電。」
つくしが司の腕を払いのけた。
「部屋から出てって。」
つくしが低く、怒りに満ちた声で言った。
「なっ怒んなって。」
「それしか考えられないの?」
「そう言うわけじゃねぇ。」
「あっちいけっ」
つくしは横を向き、布団をかぶった。
「悪かった。」
「・・・・」
「・・・ごめん。」
「・・・・」
「ごめんっ」
吐いた言葉の後に、つくしのすすり泣く声が聞えた。
つくしをギュッと抱きしめた。
「ごめんなっ」
「・・・・」
「その、それだけの目的ってわけじゃなくて・・・・その・・・・なんだ?ナニじゃなくて・・・」
「・・・・」
「とにかく、そうじゃないんだよっ」
「・・・ここに住み始めたのはその為なの?」
「違うっ」
「さっきの発言はそう言うのも意味してるでしょ?」
「いや、全部じゃねぇけど、その・・・そんなんじゃなくてなっ」
「毎月1週間。出来ません。そう答えればいい?」
「・・・・・」
「邸に帰ってくれていいから。」
「・・・ごめん。」
抱きしめた腕を払う。
動かない腕。
「離して」
「離したらいなくなるだろっ?」
「あっちの部屋で寝るから。」
「それは嫌だ。」
「今の道明寺とは一緒に寝たくない。」
「・・・ごめん。」
「・・・・」
「なんもしねぇから、ここで寝てくれ。」
「・・・・やだよ。」
「・・・どうすれば許してくれる?」
「・・・・」
「もう許さないのか?」
「・・・・」
つくしは振り向き司を睨んだ。
「今日は隣で寝るけど、指一本触れないで。」
「・・・・」
「聞こえた?」
「・・・・わかった。」
司はつくしから離れた。
「じゃあ、おやすみ。」
「おやすみ。」
この日互いになかなか寝付けない夜となった。
司が浅い眠りから覚めた朝。
スースーと寝息を確認すると、寝ていたつくしにキスをした。
すぐ目覚ましが、なるとつくしは目を開けた。
手を伸ばし起き上がるつくし。
司を見ると目があった。
「おは「昨日はごめん。」
重なる声。
「・・・・反省したの?」
「すげぇした。」
「・・・・じゃあ、もういいよ。」
「悪かった。」
目の前で捨てられた子犬の反省する司を見て、つくしはフッと笑った。
その顔に、呆れるやらなんやら。
行動一つ一つが愛情表現だとは分かっているが、体ばっかりの関係はいやだった。
それをわかってくれればいい。
つくしはベッドから出る。
少し考えつくしは振り向き司をみた。
ちゃんと反省しているようだ。
司のほっぺにチュッっとキスをした。
「反省したなら許そう。お腹空いた。ご飯食べようっ」
「おっおう。」
「早く支度してっ」
まさかつくしからキスをほっぺにされるとは思いもしなかった司が、放心状態のまま急いで立ち上がった。
一歩を踏み出した瞬間、運動神経の良い司が何もない床でつまずいた。
「バーカ。天罰だ。」
「うっせー。」
こうして今日も一日がスタートした。
お預けのまま、司は明日から出張だ。
どんなにビジネスを学び知識を得ても、乙女心の知識はゼロ
恋人同士4年も離れた期間は大きい
男の心情も女の心情も恋愛初心者の二人は現在勉強中。
* 番外編の番外編 司だけが幸せになるこの続き、読みたいですか?
出張前のつくしからの エール・・・いや、アール 笑
下記画像クリックで応援よろしくお願いします。

にほん
ブログ村
- 関連記事
-
スポンサーサイト