進は寝る間も惜しんでソフト開発をして、企画を提出した。
投票が始まり、進の企画はベスト5に入った。1日間の修正期間が設けられ、再度企画閲覧に投稿した。
デットヒートを繰り広げながら、見事に勝ち上がり進の企画は道明寺ホールディングスのプレゼン企画に採用された。
「牧野。お前スゲーな。」
進は先輩の山西に話しかけられた。
「先輩、ありがとうございます。まだ実感がないです。」
「ははは。いや、すげーよ。お前のソフトびっくりした。聞いたらお前独学で学んだらしいな。」
「はい。大学は経済学部に入ったんで。」
「まじかよ。おれら、9割が専門学科の出身だぜ?お前よっぽど努力しなんだな。」
「いやー。俺は努力っていうか、高校3年まで家にパソコンが1台しかなくて、姉ちゃんからそれを譲り受けて使ってたんですよ。
だから、新しい機能性が知らなくて、こんなのあったらと思ってパソコンいじっていました。
それで、大学3年の時に自分でパソコン買ったら、自分が欲しいって思っていた機能性とか普通にあって、悔しくなって勉強しました。
そしたらハマってしまいました。」
「えっ。お前んちビンボーだったのか?
でもそのおかげで、独学出来たってやっぱりすげーな。」
「びっくりするくらいビンボーでしたよ。
でも、ビンボーでよかったことたくさんあったんで、今は貧乏経験して良かったです。」
「ははは。おう。頑張れ。修正とかわかんないことあったら、聞けよ。
うちの企画課の奴らコンペでお前からいい刺激貰って感謝してるやつばっかりだ。
気にしないで、技術吸収したい奴に声かけて片っ端から学んで来い。
同じく企画が通った、横井さんにだって、聞いたっていいんだからな。」
「はい。ありがとうございます。俺、もっとたくさん学びたいんで、ご指導宜しくお願いします。」
「おう。頑張れよ。」
山西は片手を挙げ、去って行った。
とりあえず、社内の難関は突破。
プレゼンの仕方とソフト修正しないと。明後日までにまとめないとな。
進は初めて経験するプレゼンに緊張していた。
だが、独学で学んだとはいえ、専門学科出身の先輩に褒められ、自信を持つことが出来たので姉夫婦に挑戦状を叩きつける準備をした。
***
プレゼン当日。
進は道明寺ホールディングスの本社前に立っていた。
デケー。
これが姉ちゃんたちの戦場か。
やっぱりスゲーな。
まだまだ俺は同じ土俵の上に立ってさえいないな。
でも、今の自分実力がどこまで通用するか試したい。
チャンスをくれたお兄さんに俺の気持ちをぶつけたい。
進は震えた足を叩き、課長たちと待ち合わせ所のロビーへと向かった。
「おはようございます。今日は宜しくお願いします。」
「牧野君。今日は宜しく頼むよ。君の案も素晴らしいものだ。
自身を持ってプレゼンしてくれ。」
課長が進の肩を叩き、エールを送った。
「はい。頑張ります。」
「横井君のプレゼンの後に牧野君だ。緊張すると思うが、横井君のプレゼンをお手本に後に続いてくれ。
横井君、頼んだよ。」
「はい。牧野君。君の発案は素晴らしいものだったよ。今日は会社の代表として頑張ろう。
練習していた通りにプレゼンをすれば大丈夫だよ。フォローもするから、君らしく頑張って。」
「はいっ。ありがとうございます。緊張して喉がカラカラです。
うまくやれるかわかりませんが、頑張ります。」
進は握り拳を両手で作り、姿勢を正した。
***
3人は受付に行った。
「HSPカンパニーの笹山です。9時から行われます、ソフトウェアのプレゼンで参りました。」
「少々お待ちください。案内の者が参ります。」
「はい。」
「お待たせしました。50階の会議室になります。ご案内いたしますのでこちらへどうぞ。」
「「「はい」」」
エレベーターに乗り会議室へと向かった。
会議室には大きなモニターと最新パソコンがずらりと並んでおり、進の会社でも最近取り揃えたパソコンだった。
やっぱり世界の道明寺ホールディングスだ。
「HSPカンパニーの皆様の席はあちらになります。
プレゼンの順番は最後になりますので、パソコンはこちらの3台を使用してください。
10時に会議開始となります。プレゼンに必要なものなどご準備してお待ちください。
何かありましたらお声掛けください。」
「「「はい。ありがとうございます。」」」
「じゃあ、横井君、牧野君準備を頼む。俺はお茶を買ってくるよ。」
「「はい。」」
横井と進はプレゼンの準備を開始した。ソフトの表示速度を確認し、内容の書いた資料をブツブツと読み始めた。
会議10分前になり、道明寺ホールディングスの社員が次々と入ってきた。
「すみません、俺ちょっとトイレに行ってきます。」
進は立ち上がった。
「間もなく時間だ。急いでくれ。」
「はい。」
進は急ぎ足で、トイレに向かった。
トイレから出ると、つくしがいた。
「進、ちょっとこっち。」
小声でつくしが進を呼んだ。
「姉ちゃん、会議始まるよ。急がないと。」
「わかってる。私も出るんだから。
これ、お守り。私が初めてプレゼンした時に胸ポケットに入れてた万年筆。
あんたに貸すから頑張んな。じゃーね。」
つくしは、小走りで去って行った。
「姉ちゃん、ありがとう。」
進は小声で呟き、少し緊張が解れたことを認識し会議室に戻った。
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