やっと終わったぁ。
つくしはスーツを脱ぎ、ソファーに倒れこんだ。
こういう時は甘いものが食べたい。
そう思いながらもこれからコンビニに行く元気はなかった。
はぁー
ドーナツにチョコレート、羊羹にたい焼き。
頭に浮かぶ甘いスイーツ。
どこでもドアがあったらいいのに。
そう考えていた数分後、インターホンが鳴った
誰だろう。
モニターで確認すると、タマさんの顔。
こんな時間にどうしたんだろう。
つくしはドアを解除して、タマを待っていた。
玄関の外で待って居ると紙袋を持ったタマの姿。
「タマさんどうしたんですか?こんな時間に荷物を持って。」
「家出に見えるかい?」
笑って答えるタマ。
「クスッ見えません。」
「なじみの店のたい焼きをあんたに食べさせたくてね。」
「えっ」
「夜中に食ってもあんたは気にしないだろ?」
「食べたいと思っていたところでした。」
「なら良かった。」
つくしはタマの荷物をもち出迎えた。
「今緑茶入れますね。」
「ありがとね。」
杖を置き、タマが椅子に腰かけた。
お茶を出すつくし。
タマは紙袋からたい焼きをだした。
「温かいうちに食べようか。」
「はい。こんな時間までたい焼き屋さんやっているんですか?」
「なじみの店でね、無理言って作ってもらったんだよ。どうだい仕事の方は?」
「人の名前を覚えるのが大変です。昨日社長が花言葉で覚えているって三納さんに聞いて、私もそうしようかと思っていました。」
「花言葉ねぇ、懐かしいね。奥様は昔からお花が好きだったね。
椿お嬢様の名前も椿の花言葉のように育つように願いも込めてつけられたんだけどね。
名前負けとはいかないけどじゃじゃ馬なお嬢様だね。」
笑いながら話すタマ。
「椿の花言葉って何ですか?」
「赤椿の花言葉だけど、「控えめな素晴らしさ」「気どらない優美さ」「謙虚な美徳」だよ。
幼少期はそうだったけど、奥様が仕事に出てから、淋しい坊ちゃんの為に明るく振舞っていてね、あんな元気なお嬢様になった感じだね。」
「そうなんですか。控えめなではない気がしますが、私にとっては椿の花言葉がお姉さんにあってる気がします。
素敵なお姉さんですから。」
「そうだね。いい子に育ってくれたよ。」
「道明寺は、なんで司って名前になったんですか?」
「坊ちゃんはね、漢字の通り司る。
司るの意味は、「支配する。管理下に置く」
それと司の文字の意義は「ある集団をとりまとめる者」
財閥の後継者として生まれた運命。
他にも候補はあったようだが、司に決まったのは産まれて顔を見た時だったと思うよ。」
「・・・・なるほど。」
「実際、高校まであの学園を支配していたわけだし、これからは後継者としてとりまとめる様になっている。
運命に立ち向かうようになったのはお前さんのお蔭だね。」
「私は何もしてないですよ。あいつが道明寺司として決めたって言ってたんですから。」
つくしはたい焼きを持っていない手を横に振りながら訂正した。
「そうだったね、だが、あの坊ちゃんが頑張っているんだ、ご褒美もあげておやりよ。」
「ご褒美って。」
「なーに、目つぶって写メ撮って送ってやんな。本文は「チュッ」でいいんじゃいかい?」
「なっまたそうやって変な事ばっかり言って。」
「ははははは、あんたをからかうのが面白いからね。こればっかりはやめられない。」
笑うタマ。
ふくれっ面になりながら、たい焼きを食べるつくし。
ホームシックと慣れない環境で緊張していた数日。
つくしは少しの時間解放された気持ちになってた。
1時間もしないで帰るタマ。
「また来るよ。」
「また来てください。おやすみなさい。」
つくしはタクシーに乗るタマに深々と頭を下げた。
部屋に帰るとつくしの携帯が鳴った。
この時間。
送り主は、わかる。
さて、どうしよう。
「ご褒美ねぇ。」
携帯をみたつくし。
毎日届くそれは「愛してる」のメール。
送り主はもちろん道明寺。
サマータイムが終わった時期。
日本とNYの時差は14時間。
大体NY時間9時から10時に司が送るメール。
日本時間は22時から23時。
今まで朝勉強した方が身に付くつくしは夜早く寝るタイプ。
なので見るのは朝だった。
その為、返信するメールは今日の予定やご飯のメール。
決して、「愛してる」と返すことはなかったのだ。
100回に1回。
そう言い聞かせ送られてきたメールに5行くらいの返信内容。
100回目に<好き。>
200回目に<大好き。>
300回目に<私も。>
400回目で<愛してるかも?>だった。
今日で500回目。
どうしよう。
我ながら本当に可愛げがない。
「あの坊ちゃんが頑張っているんだ、ご褒美もあげておやりよ。」
タマさんの言葉が頭を過る。
「ご褒美ねぇ」
はぁー
つくしはため息を吐いてゆっくりと打ち込んだ。
送信ボタンを押して、送信完了が見えた途端に電源を切ってお風呂に行った。
「愛してる」
この一言をメールして。
お風呂に向かうつくし。
本人を目の前にしたて言ったわけでもないのに、顔が桜色に変わっていた。
季節は春。
マンションから見える桜がライトアップされ日本の春を演出していた。
残りの1年をどう切り抜けて行くのか、つくしの戦いは始まったばかり。
孫のような存在のつくしをタマは温かく見守り続けた3年。
タマが来た理由。
楓から「あなたもあの子をサポートして頂戴。」と言われていたから。
それだけではない。
タマは自ら道明寺の会社で働くことを選んだつくしを心配していた。
タマがつくしにしてあげられることは、お茶菓子を持って遊びに来ることだけだった。
頑張るつくしに月に1~2回たい焼きを買ってマンションにやって来た。
二人でたい焼きを食べ、世間話をするだけ。
それだけでつくしは救われた。
友人と会うことももちろん息抜きになったが、タマの独特の雰囲気につくしは癒されていた。
タマとつくし。
使用人として働いた期間。
一人になった邸にお茶を飲みに通った3年。
タマとつくしの間には、他人とは思えないほど強い絆が産まれていた。
女王蜂に仕える働き蜂。
タマもまた働き蜂。
つくしとは仕えた時間の長さが違うのだ。
1年という短い期間の中、女王蜂と働き蜂の距離が縮まったのは、秘書西田、三納、タマのお蔭に他ならない。
西田の名刺にはカポック。花言葉は「とても真面目」
三納の名刺には睡蓮。花言葉は「清純な心」「甘美」「優しさ」「信頼」「純情」「信仰」
そして道明寺家の使用人頭を勤めるタマにも名刺は存在していた。
タマの名刺に書き込んだ花。
それは オニユリ。
花言葉は 「賢者」「愉快」「華麗」「陽気」
嫁いだ時、若い時美人だったタマが怒るのを見て鬼に見えたからオニユリなのか・・・・
楓のみが知る真実。
バラが好きな楓
家族の花はバラだった。
夫である巴の名刺に書きこんだ花は赤いバラ
花言葉は「あなたを愛します」「愛情」「美」「情熱」「熱烈な恋」
愛があったから、楓は子供たちを邸に仕える者にお願いし、道明寺を夫と共に守ったのだ。
それは母親としての人生を犠牲にするものだったが。
椿の名刺にはピンクのバラ
花言葉は「しとやか」「上品」「感銘」
女性として気品ある淑女になるように願いを込めて。
自ら渡米を決意した司。
18歳で名刺を持った司には青いバラ。
花言葉は「不可能」「夢かなう」「奇跡」「神の祝福」
息子といえどもこれはビジネスよ。
あの子も4年もたてば自分が何をすべきかわかってるでしょう
司に一任します。
約束の時まであと1年。
司の未来は、花言葉のどれになるのか・・・・
不可能?
夢かなう?
奇跡?
神の祝福?
答えは Happinessで♡
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