会議に参加するつくし。
「はじめまして。牧野つくしと申します。」
「はじめまして。㈱小山の北山 裕です。今日は宜しくお願いします。」
握手に名刺交換、ショッピングモールの事業に関わる人に挨拶回り。
初日の今日だけで100枚名刺を配った。
勉強もバイトも問題なくこなすつくしは唯一苦手な事があった。
それは人の名前を覚えること。
交換した名刺を自宅に帰り、ファイリング。
企業のあいうえお順でファイリングした。
覚えている人だけ、顔の特徴を書く。
頭がつるつる。
口がデカい。
メガネ。
小柄
大柄
面長
名刺の端に書いて、ファイリング。
覚えていないのは後回し。
2時間かけて名刺ファイルを作成した。
明日は楓社長と挨拶回りだ。
まだまだ名刺が増えるのかと思うとゾッとした。
お風呂に入り、今日の会議のことをメモしたノートを見る。
会議は初めてのことで、ついていくのがやっとだった。
道明寺はこれを18歳の時に経験しているんだ。
頑張っていたんだなぁ。
改めて司の凄さを知った一日目だった。
二日目。
楓と共に挨拶回り。
緊張しながらも、気合で乗り切るつくし。
今日も50枚の名刺を配った。
これを家に帰ってファイリングしなければと思うと憂鬱になった。
楓、西田、つくし、運転手。
4人で移動する。
途中、西田が抜け、三納が代わりを務めた。
楓は、取引先の人とマンツーマンで会食となった。
三納とつくしは、同じ店のカウンターで昼食を済ませる。
つくしにとって最も頼りになる三納。
つくしは相談をした。
「三納さん、ご相談があるんですが?」
「何でしょう?」
「三納さんは、初対面の人を覚える時、どのようにして覚えるんですか?
覚えるコツとか教えてもらえませんか?」
「私は人を覚えるのが得意なので、顔を覚えて名刺をもらいフルネームで頭に叩き込みます。
覚える工夫はないですね。」
「・・・・そうですか。」
肩を撫でおろすつくし。
自力で覚えるにはどうしたらいいか考えながら、食べた。
「参考になるかわかりませんが、司様の秘書の倉田さんは野菜に当てはめて覚えていらっしゃいましたよ。」
「えっ?野菜ですか?」
「らしいですよ。野菜の特徴を人に当てはめ、野菜と主に名前を覚えるんです。
色黒ならゴボウとかだと思いますが、聞いたことがあります。
倉田さんは農家の次男坊で野菜ソムリエの資格もあるって。
いろいろな野菜を知っていると思いますから、色黒でも覚える種類は多いかもしれませんね。」
「なるほど。」
NYのパーティー会場で倉田さんは緊張する私に着飾った野菜だと思えば、緊張しないと教えてくれた。
倉田さんも同じように見ていて、野菜に置き換え人を覚えていたんだ。
たくさんの人に会うパーティー会場。
秘書は大変な仕事だ。
「それとですね、ここだけの話ですが楓社長は別な覚え方があります。」
声を潜めて言う三納。
「えっ何ですか?」
「花言葉です。」
「花言葉ですか?」
「はい。会った印象を花言葉の意味に置き換えたり、印象のまま覚えたり。
先ほども車内で楓社長が名刺に書き込みしたのを見ましたか?」
「はいっ。見ました。」
「あの名刺は、会社に戻って私が秘書課に戻り名刺をスキャンして楓社長の端末機に送信するんです。
楓社長は、名刺の端に花の名前と花言葉を書いていますよ。」
「へぇーそうなんですか。意外です。それこそ機械的に覚えているのかと。」
「意外ですか?」
「はい。正直意外でした。」
「楓社長は細やかなことまで気づきますよ。見ていると経営者としても女性としても尊敬できます。
お近くで見る機会は日本ではありません。
折角の機会ですから、ご参考にすることをお勧めします。
私もいつも尊敬していますから。」
「はい。吸収できることは吸収させていただきます。」
「ちなみに牧野様の名刺を楓社長も持っていますが、牧野様には向日葵、フジでした。
二つ書くのは滅多にないので覚えておりました。
向日葵は太陽を連想させます。生育が盛んな時期に太陽を追って動くから向日葵ってつけられたんですよ。
ここ数日牧野様とご同行して、向日葵の意味が分かります。
それとフジの花言葉も牧野様の印象でした。」
三納は笑った。
「フジの花言葉は何ですか?」
「クスッ帰ってからお調べください。」
「そんなー。」
「クスクス、もうすぐ時間ですよ。食べましょう。」
三納は食べ始めた。
その後西田の名刺にはなんと書かれていたのか聞いたつくし
三納は、笑いながら「カポックです」と答えた。
意味を聞こうとしたら、楓が出てきて聞けなかった。
その夜、つくしはマンションに備え付けてあったパソコンで花言葉を調べた。
カポックの花言葉は「とても真面目」
つくしはゲラゲラと笑った。
そして自分の花言葉である向日葵を調べた。
向日葵
「貴方は素晴らしい」「私の目はあなただけを見つめる」「愛慕」「崇拝」「光輝」「憧れ」
フジ の花言葉は 「恋に酔う」「陶酔」「優しさ」「歓迎」「決して離れない」
驚きを隠せないつくし。
楓がどういう意味でフジを書いたのか気になったつくしであった。
つくしは花言葉が面白くなり、花言葉で取引先を覚えるようになった。
覚えた花言葉がいろんなところで役に立った。
つくしは大学の勉強、仕事の復習を家でこなし、合間に息抜きで花言葉を覚えた。
サルビアの花言葉でつくしと司の夢が叶うのは、それからしばらくの事。
向日葵には別な花言葉も存在していた。
西洋の花言葉で「偽りの富(false riches)」
スペイン人がインカ帝国(ペルー)において、太陽の神殿に仕えた巫女のヒマワリを形どった純金の装身具などを奪い取ったことに由来すると言われていた。
溝鼠と罵倒した楓。
出会った時の印象も、理解した時の印象も楓にとっては向日葵だと思うのであった。
そんなつくしは本当の意味で道明寺家の向日葵のような存在になる。
それは太陽のような存在の向日葵を意味していた。
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